この機体、#89 Beck-Mahoney "Sorceress" は リー・マホニーによって設計され、リーと彼の父親である シェルドン・マホニーによって建造された機体です。 リノ・エアレースには花形のレシプロエンジン+プロペラ推進の無制限クラス、アンリミテッドの他にも小型単葉機のインターナショナル・フォーミュラワン、それよりもやや規模の大きいスポーツ、レシプロ練習機AT-6のワンメイクであるAT-6/SNJ、ジェット練習機によるJET等のクラスがありますが、本機は複葉機によって戦われるバイプレーンクラスで活躍したレーサーです。
バイプレーンクラスで競技をする機体は大抵が日本でも見られるピッツスペシャルの様な木金混合のフレームに帆布張りの機体ですが、#89の場合このクラスでは非常に珍しい全金属構造を採用しています。また上下の翼を前後にずらす食い違い翼構成を大きく取っているのも特徴的です。 外板をピカピカに磨き上げたその姿は複葉機という言葉のイメージからはかけ離れた、精悍で攻撃的で美しいものとなっています。
#89がレースに参戦したのはRENO'70からですが、その年のリノではまだテストが十分でないと言うことでレースには出ても良いが順位は自動的に最下位という変則的条件で参加を許されてリーの操縦で飛んでいます。 RENO'71では本機のオーナーとなったポール・デシャンの操縦で予選3位、決勝で2位に付けています。 '72年からは新オーナー、ドン・ベックの下で改良が進められ、'83シーズンでレース活動を終えるまでの間にRENOで3勝をしています。また複葉機クラスで初めてコース周回速度で200mphを越え、予選の記録を次々更新するなど安定した強さを発揮し続けました。
#89はその後スミソニアン航空宇宙博物館へ寄贈され、2003年に開館した別館の Steven F. Udvar-Hazy Center で展示されています。
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